それは、照れ隠し。
「・・・・・・け、圭一くんっ・・・」
「んー?」
白い息を上げて、レナはオレに抗議した。
寒さの為か、
あるいは、今のこの状況のせいか
レナの顔はすごく真っ赤で。
今日はとても寒くて、
既に雪が積もっているような日だった。
だから、こんな寒い日には、
「・・・そんなに嫌なら止めるけど・・・」
そう言いながら、オレは顔の横に手をついた。
お陰で、今のレナは
オレと樹の間に、逃げ場が無い状態で。
「オレに、キスされるの、嫌?」
敢えて言葉にすれば、
抵抗していたレナは、驚いたように硬直した。
――うん、オレ今、すげー楽しい。
一生懸命にやける顔を真顔に戻して、
さらに距離を詰める。
あともう少しで、触れそうな、そんな距離。
でも、敢えて触れない距離。
「・・・・・・・・・圭一くんの、いじわる・・・・・・」
我慢しきれなくなってしまったのか、
レナは小さな声で、そう言ったまま
俯いてしまった。
そのせいで、レナの顔が見えない。
――別に、苛めているつもりはないんだけどな。
「――レナ?」
もう一度、上を向いて欲しくて
再度名前を呼ぶと、
「・・・・・・あっ」
大きな声を出して、
そのまましゃがみ込んでしまった。
逃げれないようにしたつもりなのに、
あっさり下から抜け出られて、
オレの計画は台無しだった。
おまけに、
「圭一くん、圭一くん!!
誰かが、かぁいい雪だるまさん、作ってあるよ!!」
とか言いながら、その雪だるまを指差して、
先程の雰囲気の欠片もないほど、
子供みたいな目でオレを呼んでいる。
――むしろ、意地悪されてるのはオレの方だろ?
大きく溜息をつきたい衝動を抑えつつ、
代わりに頭を掻きながら、
オレも雪だるまを見るために座り込む。
「かぁいいよね、雪だるまさん」
「・・・・・・あー・・・そうだな・・・・・・」
折角追い込んだ獲物に逃げられたような、
そんな気分を味わいながら、
それでも、何か幸せそうな顔で笑っている
レナが見られたからから、まぁ、いいか。
――ただし、今のところは、な。