サンタのおじさんは言いました。
「
真っ赤なお鼻のトナカイさんは、
」の続編となります。
いつもの分かれ道で
圭一くんに、お別れの挨拶をしようとしたけれど、
今日に限って
上手く言葉が出てこなかった。
その原因は、何となく分かっている。
今日は、学校でクリスマス会が催されて、
頑張って支度した甲斐もあり、大成功だった。
圭一くんが寸劇で、
トナカイの角の被り物をしたのも、その要因だったと思う。
――今思い出しても、笑いがこみ上げてしまう位、楽しくて。
だから、だと思う。
片付けが遅くまで掛かってしまい
夜空に星が見えているのに
何だか、まだ帰りたくないのは。
「・・・今日は、送って行こうか?夜遅いし・・・」
ふと、圭一くんから、そんな一言が漏れた。
時間も遅いのに、レナを送る為に。
「あー・・・ほらほら、オレ、トナカイだろ?
だから、『レナサンタ』を送り届けないとな?」
今日被った、トナカイの角を示すかのように
頭の上を指差して。
相変らず、はにかんだ笑顔のまま。
「・・・レナがもしサンタさんだとしたら、
それは、圭一くんが赤鼻トナカイさんだったから
レナはサンタさんになれたんだよ?」
「へ?」
突然言い出したレナの言葉に
圭一くんは、とても驚いた顔してる。
だって、真っ暗な夜道を照らしてくれたから・・・
だから真っ直ぐに進む事が出来た。
一生懸命笑っていれば
いつか幸せになれるんじゃないかと、
そう思って頑張って来たけれど
いつの間にか、進む方角さえ分からなくなっていた。
辛くて悲しくて寂しくて、真っ暗で・・・
だから――
「ここまで送ってくれて有難う。
でも、今日は遅いから、ここで平気なんだよ、だよ。
・・・・・・おやすみなさい、赤鼻トナカイな圭一くん」
そう言ったきり
レナは圭一くんの鼻に軽くキスをした。
夜道を照らしてくれた、
真っ赤なお鼻のトナカイさんの、その鼻に。
「・・・・・・お、おやすみ・・・」
勢いでそんな事をしてしまったけれど。
恥ずかしくて、慌てて家に向かって帰ってしまった。
背後で、聞き漏らしてしまいそうな程の
そんな挨拶を耳にしながら。