幸福論。
――あの時の俺に、言ってやりたい事がある。
例えば
頭を撫でた時の髪の毛とか、
「・・・け、圭一くん、急にどうしたのかな、かな?
頭なんか触って、髪の毛に何か付いてたりする?」
例えば
ほんのり色付いた、紅い頬っぺたとか、
「ふっ・・・・・・な、何だろ、何だろ?
今度は、ほ、ほ、頬っぺたに何かついてたりするかな、かな?」
例えば
それが、マシュマロみたいに柔らかいとか、
「ふぇ〜はぅぅ・・・・・・つ、次は、何でだろ、だろ?
な、なな何で、ほ、頬っぺた引っ張るのかな?
圭一くん、変だよぉ・・・・・・」
例えば
俺より低くて、でもあったかい掌とか、
「ちょっ・・・何で、止めさせようとしたレナの手を
今度は圭一くんが握っているのかな、かな?
はぅぅぅ・・・・・・・・・」
例えば
ちょっと泣きそうな、上目遣いの目とか、
「・・・も、もう何が何だか良く分からないよ〜
し、しかも、圭一くん、何もお喋りしてくれないし・・・
・・・・・・・・・それに・・・な、ななな何で、何で、
今ハグされているんだろ、だろ?・・・ふぅぅ・・・」
例えば
――ちゃんと生きている事。
「・・・・・・んー・・・レナは、あったかいな〜っていう確認」
「・・・・・・・・・か、確認?」
「そ、確認」
「・・・・・・・・・でも、圭一くんも、あったかいよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
全てが偽りだと思った、あの時の俺に言ってやりたい。
――彼女がいてくれて、今の俺は幸せです、と。