言葉と態度。




   無言の態度は、言葉より強力――

   圭一はそれを今確信した。
   部活が無くなった、学校帰り。
   勉強会目的の圭一の部屋で、窓から差し込む夕日に照らされながら。

   「・・・・・・けいいち、くん・・・」

   始めは普通に宿題を全うしていた。
   でも突然、小さな声が聞こえてた。
   少し掠れた、いつもより甘いレナの声。
   驚いて圭一が顔を上げると、
   夕焼けのせいで、赤みを帯びたレナと目があった。
   泣きそうなレナの目と。

   それから、レナは教科書を置くと、テーブルに手を付いた。
   少し軋んだ音が響く。
   気付けば眼前にはレナの顔。
   狭まる距離。
   顔に掛かる息。
   そして、僅かに触れる唇。

   言葉よりも、もっと強力で、
   圭一は少しも動く事が出来なかった。










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