恋のキッカケ。




   ――この気持ちに気付いたのは、あの時から。


   転校から始まる事は、何も無いと思っていた。
   これは逃げだって、分かっていたから。
   だから雛見沢に来て、
   部活の皆に親切にして貰えるだけで、すごく嬉しかった。
   あの部活動の時の、冗談でも本気の勝負。
   それだけで満足だと思った。
   でも気持ちは貪欲で。

   徐々に仲良くなって、
   レナの、あの反応が面白くて。
   ワザと歯の浮く様な台詞を言ったりした。
   その事に対して時々、冗談混じに怒ったりしていたけど、
   それすら楽しくて。
   初対面の時からは想像出来ない程、
   毎日が笑いで満たされていた。
   以前のオレからは想像出来ない程。
   だから時々不安になった。
   突然オレを嫌って、
   徐所に距離を取り始めるんじゃないかって。
   不意にオレの近くから、
   レナは、居なくなってしまうんじゃないかって・・・

   「圭一くん、あのね?
   レナは、魅ぃちゃんも沙都子ちゃんも、
   梨花ちゃんも大好きなの。
   それから、圭一くんの事も大好きなんだよっ。
   だからね?
   圭一くんにも、もっとこれから・・・
   ずっとずっと一緒に笑っていてくれたら嬉しいかな、かなっ」
   ある日の帰り道。
   特に話の続きと言う訳でもなく、
   突然レナは言葉を切り出した。
   唐突だったけれど、
   レナは感のいい奴だから
   オレに気を遣って言ってくれたのかもしれない。
   だけど、その言葉で
   自分の不安の原因が分かった気がした。



   多分、この不安は
   オレが、レナに恋をしていたからだって――










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