どうしよう。




   「・・・・・・レナ?」
   夕焼け空の、いつもの帰り道。
   突然の沈黙と、それから服を弱々しく引っ張ったレナに、
   オレは少し困惑気味で問いかけた。
   俯いたレナの表情は、オレの位置からは見えない。
   ただ、オレの服の裾を握って、立ち止まったまま。
   しばらく、オレもレナもお互い動かずにいたけど、
   やがてレナが小さな吐息と共に、こう呟き始めた。
   「・・・・・ど、どうしよう、圭一くん・・・
   最近、レナ、変なの・・・どうしよ・・・」
   さっきまで会話していた声とは違って、
   ちょっと泣きそうな声で。
   それから、オレの服の裾をぎゅっと握りしめて、
   ただ、「どうしよう・・・」ばかり呟く。
   その態度は、
   確かに困っているようだけど、何だかそれとも違う気がする。
   一体どうしたんだ?
   「一体何が『変』なんだ?
   落ち着いて話してみろよ?」
   オレがゆっくり話すと、レナはこくんと一つ頷いて、
   ゆっくりオレの方を向いた。
   「あ、あのね?
   あ、あの・・・どうしたらいい、かな・・・
   最近・・・ドキドキするの、圭一くんといると・・・」
   ちょっと涙目になりながら、
   顔を真っ赤にさせてレナが言った。
   多分、夕日のせいだけじゃないと思う。
   ・・・・・・正直、『どうしよう』はこっちだけどな。










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