故意に、恋。




   初めはその、不自然な持ち方に目が留まった。
   わざわざ手首を捻るような、その持ち方に。

   癖なのかなと、一瞬そう思ったけど、
   でも、普段はそんな持ち方していなかったから
   故意にした持ち方だったんだと思う。

   何処か怪我をしていたのか、とか
   コップの方の飲み口に何か問題があったのか、とか
   色々考えたりしてみたけれど、
   一回限りの事ではなかったので
   レナの考える理由では無かったんだと思う。

   ごく偶にしか、そんな持ち方をしていないので、
   聞くタイミングを逃してしまったり、
   あるいは、殆どが聞く事自体忘れてしまっていたので、
   結局、原因は分からず仕舞いでいる。

   ただ、共通して言える事は
   誰かの水筒を回し飲みしたり、
   買ったジュースを皆で飲み合ったりした時などに、
   その持ち方が多かったように思う。
   でもその時も、必ずそうする訳ではなく、
   本当にごくごく偶にするだけ。

   だから今日、
   その持ち方をした圭一くんに、思わず目を奪われていた。
   飲み辛いだろうに、
   手首を捻って飲む様は、別に苦痛そうでも無く。

   不意に、レナの視線に気付いたのか、
   圭一くんがこちらを向いた。
   一瞬驚いたような感じで、
   直ぐに目線を逸らされてしまったけど。
   それから、レナには何も言わずに
   魅ぃちゃん達と普通に話を始めてしまった。
   結局、その持ち方の理由も
   まして、目線を逸らされてしまった訳も
   まったく分からないまま。
   ただ、圭一くんの目元が、
   ほんのりと紅くなっているような感じがする。
   何故紅くなっているのか、この理由もよく分からない。
   ・・・・・・でも、そう言えば、
   圭一くんが、決まって変な持ち方をするときは、
   レナの後に飲む時だけの様な気がする。
   それって、何か関係があるのかな、かな?










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