鼓動のない日




   あの日には確かに、鼓動が無くなっていった。
   正確に言えば、
   その日の終わりに、
   ――人生の最期の時に。

   友人を信じられない苦しみや、
   自分の犯した事実に
   痛みよりも、
   混乱していた気がした。

   そして、また振り出し。
   全ては無かったかのように、友人とは友人のままで、
   自分の犯した罪は存在していない事になっていた。

   ただ、あの時の記憶もないままなので、
   自分が罪を犯さなくても、
   友人を信じていても
   結末は、変わらない。

   鼓動のない日は、結局訪れる。

   だけど、
   この夏の繰り返しに、挑戦しようと思う。
   記憶がある今なら、きっと、何かが変わるはず。

   ――もうすぐ
   今の自分にも、「鼓動のない」瞬間が近づいてきているけれど。

   「・・・オレが殺そうとした・・・時で、も・・・信じ、て、くれたレナ、だから・・・・・・
   レナ、は・・・・・・レナ、だか、ら・・・・・・
   オレは、ちゃん、と・・・信じて、る、よ・・・・・・・・・」

   何かが、落ちるような音がした。
   それから、レナが叫んでいるような気がする。
   怒っているような、何とも言えない声で。
   悔しいけれど、
   もう、意識が遠くなり始めていて
   何と言っているのか、よく分からない。

   ただ、少しは、この夏に爪跡が残せたのだろうか。
   もしも成功したのなら、
   次は、少しでも良い結末を迎えられたらと思う。
   大丈夫、いつかきっと、上手くいく。
   いつかきっと。
   そうしたら、オレはレナに――










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