「初めまして」




   「初めまして」

   席についた時、そう言われた。
   部活の皆に。
   一瞬オレは言葉に詰まる。
   一緒に通学した事も、楽しかった部活動も、
   ……塞ぎ込んでいたあの時の自分から、立ち直らせてくれた事も。
   全てが無かった事になっていた。
   確かに、初めの挨拶としては一般的だと思う。
   ただしそれは、初めて会った相手であるならば。
   では、自分の記憶だけがある場合は、どうしたらいい?
   相手だけが、記憶を無くしてしまったら?

   「……圭一、くん?」

   不思議そうに見上げてくるレナに、
   ――この気持ちは、一体どうしたら、いい?










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