口実
「……圭一くんって、本当、レナに甘いなぁ。」
俯き加減に言われた一言で、いつかを思い出した。
バットを振り下ろすのを、躊躇した一瞬、
容赦なく、斧でバットを弾き飛ばされた時を。
――……本当に、圭一くんはレナに甘いよ。
冷たい目で、口元には笑みを湛えて。
同じ様なフレーズに、あの時を思い出していた。
レナは覚えてはいないかもしれない。
ただ、あの時とは状況が違っていても、
オレの答えは同じだった。
「…んー、甘いんじゃなくて、ただの口実だって」
「?口実?」
『宝の山』に小雨が降る中、
二人分の傘を手に車中に乗り込むと、改めてレナを見た。
自然と頬が緩む。
「そ、レナと一緒にいたいからな!」
「!むぅ〜、からかい禁止なんだよ、だよ!!」
あの時も、今も、答えは同じ。